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ビールの広告は、本当においしそうですね。
まあ、おいしそうにできなければ、広告として失敗なのですが。(笑)
皆さんがご覧になって、おいしそうに感じることを業界用語で「シズル感」と言います。
ですから、おいしそうに見えないときは、クライアントから「シズル感が足りない!」とお叱りを受けるわけです。
では、そのおいしさ感をどう演出しているのでしょう。
皆さんは、居酒屋などに張ってある生ビールの大きなジョッキのポスターをご覧になったことがありますよね。あのジョッキの写真を撮るだけで、丸1日以上スタジオに入りきりで、スタッフは20人以上が付きっ切りになります。CMの場合には50人くらいの人が関係しています。
ジョッキにおいしそうな汗がついていますね。これを我々は、ジョッキにシズルをつけると言います。
きれいに洗って自然乾燥させたジョッキを2~30個用意して、ひとつひとつ丹念にロウのスプレーを吹きかけ、布でなじませます。この作業だけでも数時間かかります。
次にゆっくり冷えたビールを泡を立てないように斜めにして7分目まで入れます。
そのあと、泡をつけなければなりません。
なぜ、注ぐ時に泡をそのままつけないか、疑問ですよね?ビアガーデンのようにそのまま注げばいいのにと思っていらっしゃいませんか?
そのやり方だと、シャッターを切る時には泡が沈んでしまいます。
昔は、泡の代わりにシャービングクリームを使ったり、塩を入れると泡が吹き出すのでそれを利用したり、注射器で底に空気を送り込んで、泡を作ったりしていました。
あらゆる試行錯誤の中、我々は「固い泡」を作ることに成功しました。ここは、「特殊効果屋さん」の企業秘密なので公開はできませんが、本物のビールをとても決め細やかな泡に仕立てて、先ほどの7部目に注いであるビールの上に静かに継ぎ足してゆきます。
これで、てんこ盛りの泡が完成します。
その後に霧吹きで、満遍なくジョッキにシズルをつけて行きます。
これでようやく出来上がりですが、ロケの場合、ここまで準備ができたところで、太陽に雲がかかったり、モデルさんが斜めにして泡をこぼしたり・・・・。スタッフ一同から「あ~あっ!!」の大合唱が起こります。
テレビCMで、飲む人たちがたくさんいると、本当にこの準備が大変です。ですから、なみなみ注いだビールをたくさんの人が一斉に飲むシーンはほとんどありませんよね。できないし、やりたくないんです。(本音)大体は、少し飲んだところから使っています。
最後に、ライティングが命です。
この写真もきれいなビールの色ができていますよね。これは、ジョッキの裏に小さなレフ板をつけていて、レフ板に光を当てることによって前に透き通った琥珀色が出るように調整をしています。
では、作るのにどれくらいのお金がかかるの?とか思いますよね。
ジョッキのポスターをロケで1枚作ったら、安くても1000万円くらいです。
CMでタレントがいない場合でも2~3000万円かかります。
こんなことを知りながら、ビールの広告を見ると、また違った楽しみがあるかも知れません。
※KIRINさん、すみません。ちょっと写真をお借りしました。
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